サッカーでは、判定に関する疑問はつきものだ。時代は変わり、判定の運用への疑問が湧くようになった。現在のVARの問題点を、サッカージャーナリスト・大住良之が突く。
■VARは「神の声」
「審判は黒子。良い試合とは、審判がいたのかどうかわからない試合だ」
以前、よくこんなことが言われた。しかし現在のサッカーの大きな話題は、見事なチームプレーでも、天才プレーヤーの創造性あふれるプレーでも、DFやMFの超人的ながんばりでも、そしてGKの冷静そのもののセーブでもない。現代サッカーの最大のスター、それは、残念なことに、「ブイ・エイ・アール」氏なのである。
VAR、ビデオ・アシスタント・レフェリー。だが彼には顔はない。得点がはいったり、PKがあるとピッチ上の「黒子」である主審が左手を耳に、右手をまっすぐ前に突き出して「待った」のポーズをしている間、どこかでコンピュータが「カチカチ」と音を立てながら計算をしている。そして「正解」を導き出す。そしてその結論が主審に伝えられると、それまでさんざん文句を言っていた両チームの選手たちは去勢されたかのようにおとなしく引き下がる。「ブイ・エイ・アール」氏は「神の声」だからである。