■その8 サッカー王国

 

 「サッカー王国」と呼ばれ、実際、ワールドカップで最多の5回もの優勝を遂げ、どの大会でも主役を演じるブラジル。昨年のカタール大会で第22回になったワールドカップだが、その全大会に出場している唯一の国がブラジルだ。しかしブラジルは最初から「王国」だったわけではない。

 1938年のワールドカップ・フランス大会ではレオニダスという天才FWを擁して高い評価を受けたブラジルだったが、自国開催で優勝の期待が高まった1950年大会ではウルグアイに逆転負けを喫して国民を失意のどん底に陥れた。そしてようやく初優勝を飾ったのが、6回目のワールドカップ参加、1958年のスウェーデン大会だった。

 この優勝をもたらしたのが、世界のサッカーにすい星のように現れた17歳のペレである。グループリーグの第3戦、ソ連戦に初登場すると、目覚ましいプレーで2-0の勝利に導き、準々決勝のウェールズ戦ではワールドカップ初得点を記録して1-0の勝利に貢献、準決勝のフランス戦(6-3)ではハットトリック、そして決勝のスウェーデン戦(5-2)でも2点を記録し、ついにブラジルに初優勝をもたらしたのだ。

 「17歳で世界最高のプレーヤーと呼ばれる選手を生む国」。ブラジルの「王国伝説」の始まりである。

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