■北海道の人々への感謝
ワールドカップ・カタール大会を目指す日本代表の監督に森保氏の就任が発表されたのが2018年7月26日。ロシアで開催されたワールドカップで西野朗監督率いる日本代表がベルギーに2-3で逆転負けした24日後のことだった。前年の10月にオリンピック「東京2020」を目指すチームの監督となっていた森保氏は、2018年の4月にバヒド・ハリルホジッチ監督解任に伴って就任した西野朗監督のコーチも兼任していた。若い世代を率いてすでに活動を始めていたうえに西野監督の下でワールドカップも経験した森保の選出は、半ば当然のことだった。2020年オリンピックチームの監督との兼任という役割も、日程面での困難は予想されたが、注目すべき点だった。
そして9月の親善試合から「森保Japan」がスタートするのだが、その道は思いがけなく多難なものとなった。
まず初戦に予定されていた札幌でのチリ戦が、前日に北海道胆振地方東部で起きた大地震で中止になった。すでに札幌にはいってトレーニングしていた日本代表に直接の被害はなかったものの、北海道全域が数日間停電となり、宿泊ホテルではエレベータも止まった。このときに自分や家族が大変な状況にもかかわらず代表に不便をかけないようにと懸命に努力してくれた地元の人びとへの感謝の気持ちが、森保監督の「日本中のファンを笑顔にしたい」という強いモチベーションにつながった。