■アルゼンチンにあった20代前半の選手の急成長
オーストラリアとのラウンド16は、2対1で競り勝った。35分、メッシの技巧的なシュートでリードする。後半に入った57分には、ロドリゴ・デ・パウルのチェイシングからアルバレスが貴重な2点目を流し込んだ。
そのまま試合を終わらせられれば、内容的にも申し分なかっただろう。しかし、77分に相手のシュートがDFに当たってコースが変わり、1点差に詰め寄られる。アディショナルタイムには至近距離から決定的なシュートを許したが、GKエミリアーノ・マルティネスの左手がチームを救った。
準々決勝も接戦に持ち込まれた。
オランダを相手に前半を1対0で折り返し、後半73分にメッシのPKで2点差とする。優勝を目ざすチームなら、このまま試合を終わらせなければならない。ところが、83分と90+11分に失点を重ね、PK戦まで持ち込まれてしまったである。
試合経過とスコアを辿ると、アルゼンチンの歩みは率直に言って危うかった。もっと早い段階で大会から去っても、おかしくなかっただろう。
しかし、スリリングな攻防をくぐり抜けていったことで、チームは逞しくなっていた。大会途中からスタメンに定着したアルバレス、マカリステル、21歳のエンソ・フェルナンデスらは、メッシの庇護下から少しずつ抜け出していった。マカリステルとフェルナンデス、それにデ・パウルの中盤のトライアングルは、試合を重ねるごとにメッシにあずける場面が減っていった。
とにかくメッシを使うのではなく、できる限りいい状態でパスを出すことで、背番号10の負担軽減を実現していった。
背番号9を着けるアルバレスは、ラウタロ・マルティネスからポジションを奪った。メッシに次ぐ4ゴールを記録し、黒星発進からチームが立ち直る原動力となった。
最終ラインを形成する右CBのクリスティアン・ロメロ、右SBのナウエル・モリーナは、ともに24歳である。彼らもまた、試合を重ねるごとにプレーが力強くなっていった。自己解決能力を高めていった、という表現も当てはまるだろう。