後藤健生の「蹴球放浪記」第140回「“お祈りの時間には応援自粛”という通達」の巻(1)日本にとってゲンの良い場所となったドーハの画像
UAEラウンドの取材パス 提供/後藤健生

 中東で初めてワールドカップが開催されたが、蹴球放浪家・後藤健生にとってはなじみの土地でもある。だが、当然ながら「初めて」はあったのだ。あの「ドーハの悲劇」が生まれた頃…。

■中東という地の利

 2022年のワールドカップは史上初めて中東のカタールで開催されました。ドーハおよび周辺都市での開催ということで、すべての会場がメトロやバスでアクセスできるため、1日に2試合以上を観戦することができるので大変に便利な大会でしたが、宿泊施設が不足してホテルなどの宿泊料が高騰してしまいました。

「中東での開催」を旗印にするなら、やはりカタール単独でなく湾岸諸国(アラビア湾周辺の産油国)の共同開催にすべきだったのではないでしょうか?

 モロッコがアフリカ初のベスト4進出を果たしたのが大会後半最大の話題となりましたが、これも同じイスラーム文化のカタール開催だったことのおかげだったのは間違いないでしょう。

 カタール人とモロッコ人では民族的にも違いますし、同じアラビア語でも湾岸地域とマグレブ地域では口語としては大きな差がありますが、イスラーム教徒ならコーランを暗唱できるわけで、アラビア語は共通語として通用します。

 また、アジアとアフリカの中間にあるアラビア半島は地理的にはアジア大陸の一部とされ、サッカーの世界でもカタールはアジア・サッカー連盟(AFC)のメンバーなので、アジア諸国にとってもカタールは馴染みのある会場でした。

 日本代表にとっても、ドーハは1993年のあのアメリカ・ワールドカップ最終予選を初め、何度も戦った経験のある場所でした。2011年のアジアカップではハリファ国際スタジアムでの決勝戦でオーストラリアを下して優勝しています。そのハリファ国際スタジアムでは、今大会でもドイツとスペインに勝利。日本にとってはゲンの良いスタジアムの一つです。2023年のアジアカップにも期待しましょう。

 日本以外のアジア諸国にとってもドーハは慣れ親しんだ場所。日本以外にも韓国、オーストラリアがグループリーグを突破しましたが、やはり準ホームだったことのアドバンテージは大きかったのではないでしょうか?

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