■アルゼンチンの原動力
さて準決勝である。
12月13日には、アルゼンチンが3-0でクロアチアを下し、6回目の決勝進出を決めた。クロアチアにボールをもたせ、奪って速攻をかけるというゲームプランが的中し、面白いようにカウンターからゴールが決まった。
その3点目、ダメ押し点を生んだのがリオネル・メッシである。右タッチラインでスローインを受けると、ゴールラインまで進んで中央に送り、FWフリアン・アルバレスにパスを送った。アルバレスはゴールに送り込むだけだった。メッシはアルバレスに対するファウルで得たPKで先制点も決めており、この試合でも決定的な役割を果たした。
メッシは1987年6月24日生まれ。もう35歳であることに驚く。そして気がつけば、2006年からなんと5回ものワールドカップに出場しているのである。2014年ブラジル大会では、メッシひとりの力でと言っても過言ではない活躍でアルゼンチンを決勝まで導いている。そして今大会も、どちらかと言えば「労働者」タイプの選手を並べたアルゼンチンに、「違い」を生んでいるのがメッシなのである。
FCバルセロナ時代には、スペイン・リーグ10回、UEFAチャンピオンズリーグ4回、個人としても「バロンドール」7回と、欲しいものはすべて手に入れた観のあるメッシ。しかしワールドカップは手中にしていないのである。
彼と同時代に世界をリードしてきたクリスティアーノ・ロナウド(37歳)も、レアル・マドリード時代にタイトルを取りまくり、「バロンドール」も7回受賞している。しかし彼にも、ワールドカップだけはなかった。そしてロナウドは、この大会ではポルトガル代表の先発を外され、準々決勝でモロッコに敗れて大会を去っている。
ロナウドがかなえられなかった夢を、メッシはかなえることができるだろうか。決勝の相手は今夜決まるが、メッシの天才と周囲のハードワークがかみ合ってきたアルゼンチンだけに、そのチャンスはドイツに屈した2014年大会以上に大きいように思う。