W杯での数々のドラマ

 その後、ワールドカップだけでもPK戦は数々のドラマを生んだ。

 1986年メキシコ大会では準々決勝の4試合のうち3試合がPK戦となった(90分で決着したのは、ディエゴ・マラドーナの“神の手”ゴールと“5人抜き”があったアルゼンチン対イングランド戦だけ)。守備的サッカーが横行した1990年大会ではアルゼンチンが準々決勝のユーゴスラビア戦と準決勝のイタリア戦をともにPK戦の末に勝ち抜いて決勝に進出。決勝では、同じくイングランドとの準決勝をPK戦の末に勝ち上がってきた西ドイツと対戦し、流れの中のPKでのゴールが決勝点となって西ドイツが優勝した。

 そして、1994年アメリカ大会は決勝戦のブラジル対イタリアがスコアレスドローに終わり、PK戦ではイタリアの名手フランコ・バレージとロベルト・バッジョが失敗してブラジルの優勝が決まった。

 2022年のカタール・ワールドカップでも、ラウンド16ではクロアチア対日本に続いて、モロッコ対スペインもPK戦となってモロッコが勝ち上がり、さらに準々決勝4試合のうち2試合がPK戦にもつれ込み、クロアチアが優勝候補と思われたブラジルを破った。

 クロアチアはグループリーグでカナダに4対1で勝利したものの、モロッコ、ベルギーとは引き分けており、準々決勝までの5試合を1勝4引き分けという成績でベスト4に進出したことになる。

 また、クロアチアは2018年のロシア大会で準優勝しているが、ラウンド16(対デンマーク)と準々決勝(対ロシア)をやはりPK戦で勝ち上がってきており、2大会連続でPK戦を武器にベスト4に進出した。

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