■1990年と今大会の違い
1990年にアルゼンチンが2度のPK戦を経て決勝まで勝ち進んだ時にはかなり非難を浴びたものだが、クロアチアのPK戦勝利についてはさほど批判はないようだ。
優勝経験のあるアルゼンチンのようなサッカー大国とは違って、人口約400万人の小国クロアチアがサッカー大国ブラジルを倒すのであれば、PK戦という手段も許されるということなのか。あるいは、アルゼンチンがPK戦で開催国イタリアを破った試合が当時SSCナポリに所属していたマラドーナの本拠地ナポリで行われたため、イタリア北部でマラドーナへの反感が強かったのに対し、ルカ・モドリッチが万人に愛される人格者であることの結果なのかもしれない。
もちろん、PK戦という方式が採用されている以上、それに対して万全の準備をして、PK戦で勝ち進むことで批判を受ける理由はない。ドミニク・リヴァコヴィッチという勝れたGKを擁し、PK戦のための周到な準備を行ったことがクロアチアの躍進につながったのであって、そのことは称賛すべきことであって決して非難すべきことではない。
だが、これほどPK戦決着の試合が多くなってしまうと、ワールドカップにおける順位というものの価値が失われてしまいかねない。
試合はいずれも引き分けだったのに、クロアチアは2大会連続ベスト4以上という成績となり、準々決勝のPK戦で敗れたロシアやブラジルは5位以下、ラウンド16のPK戦で敗れたデンマークや日本は9位以下となってしまうのだ(ワールドカップでは各ラウンドで敗れたチームにも勝点などによって順位付けがされており、ブラジルは7位、日本は9位というのが最終成績となる。ちなみに、グループリーグ敗退の中で最上位はドイツの17位、最下位はカタールの32位)。