ワールドカップで世界中の人々が交流する意味【カタール現地ルポ“計25大会出場”ジャーナリストのW杯】の画像
人々の交流も、ワールドカップの一部である 撮影:中地拓也

  2人合わせて「ワールドカップ25大会」を取材した、ベテランジャーナリストの大住良之と後藤健生。2022年カタール大会でも現地取材を敢行している。古きを温め新しきを知る「サッカー賢者」の2人がカタール・ワールドカップをあらゆる角度から語る!

■中東の変わらぬ暑さ

 取材で中東の国にきたのは何回目だろうか。猛暑の6月の時期もあった。

 いつだったか、オマーンのマスカットでの取材で日本代表の試合前日会見に行ったとき、カメラマンの今井恭司さん、後藤さんと3人で自分たちのホテルまで歩いて帰ろうかと、歩き始めたことがある。3.7キロ。ゆっくり歩いても1時間で着くだろうと考えていたのだが、甘かった。気温40度。太陽は中天にあり、日陰などほとんどなかった。結局30分ほど歩いて大きなレストランを見つけ、そこでタクシーを呼んでもらった。

 カタールを含め、アラビア半島諸国の夏は本当に厳しい。40度どころか50度になることもある。そのなかでワールドカップ・スタジアムの建設を進め、メトロなどインフラ整備の工事に従事した出稼ぎ労働者たちは本当に大変だっただろう。ましてこの10年ほどのドーハの変わりようを見ると、超高層ビルの林立やルサイルの港湾部に生まれた住宅地の人工島など、巨大な建設プロジェクトが同時進行していたのだから、短期間にどれだけの労働力が投入されたのか、想像もつかない。

 ただ、私がかつて聞いたところでは、湾岸諸国では、気温が40度を超えるときには日中の屋外での労働は禁止になるということだった。多くの地域では日が暮れると急激に湿度が上がり、猛烈な蒸し暑さになるから、過酷な労働条件であることに変わりはないが…。

 英国の『ガーディアン』紙は、「インド、パキスタン、ネパール、バングラデシュ、スリランカの移民労働者が、2010年から2020年の間に6500人も死亡した」と伝えている。カタール政府は、「この数字には病気や交通事故死も含まれており、ワールドカップ開催に向けた整備事業での死者は3人に過ぎない」と主張している。

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