■超攻撃的かつ守備もするブラジル

 だがイングランドで私が最も感心したのは、アンカーのデクラン・ライス(23歳)、インサイドMFのジュード・ベリンガム(19歳)とメイソン・マウント(23歳)の3人で構成された、これまでのイングランド代表には見られなかった中盤の戦術能力の高さだ。「獣」のようなFW陣がピッチのラスト3分の1のところで遺憾なくスピードを発揮できるのは、中盤の3人がパス回しや位置取りの妙で相手の守備の絞りどころをなくしてしまうからだ。

 少なくとも、今大会のイングランドは、1980年代からのワールドカップで、最もその時代のサッカーの頂点に近い内容のサッカーをプレーしているチームのように感じられる。

 一方のブラジルは攻撃陣の強烈な個人技とスピードに尽きる。右のラフィーニャ、左のヴィニシウス・ジュニオール、そして中央のネイマールとリシャルリソン。東京オリンピックチームのエースだったリシャルリソンの急激な成長で、ネイマールが自在にポジションをとってチャンスメークに回れるようになったのは大きい。

 超攻撃的なチームだが、ボールを失った瞬間の守備への切り替えの迫力はおそらく今大会ナンバーワンだろう。とてつもない才能をもったアタッカーたちがこれほど守備に手を抜かないところに、チッチという監督の偉大な能力が示されている。

 大会はまだグループステージの半分を終わろうとしているところ。大会序盤に好調だったチームが調子を落としていくことはよくあることだし、逆に序盤でつまずいたチームが立て直して尻上がりに良くなり、決勝まで進んでしまうこともたびたび見てきた。

 「7試合目(決勝戦)」の予測などできないが、「今大会で見ておくべきチーム」は、後藤さんにとってどこだろうか。

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