■若きインターン生の感性は「アンテナ」として機能し、固まった価値観を打破する
始まりは、一度フットボールビジネスの現場から離れ、一般企業に転職してJリーグを外から眺めていたときの岡田部長の危機感が推進力になっている。
岡田部長いわく、各Jクラブでスタッフの高齢化が進んでいる。交流のある現場からも「人材が枯渇している」との声が上がってきていた。かつては業務内容に魅力を感じ、身を投じる人間が後を絶たなかったサッカー業界だが、雇用条件がネックになり、人材が新しく入ってこない、または長期間定着しないという状態が慢性化している。そして新卒を育てる環境になく、即戦力を必要とする小規模なクラブが増えているという実態があるのだ。
そこで、まずはスポーツビジネスはやりがいがあって楽しいということを広め、人材の畑を耕そうと考えたことがこのインターン制度の始まりだった。直接即戦力を期待するのではなく、まず興味を持ってもらい裾野を広げたいというのが第一だったという。
インターン生の感性には若いファンの感性と共通したものがあり、アンテナとして機能する。それによって既存のスタッフが持つ固まった価値観を打破する状態を作りたいということも、もうひとつの狙いとしてあったという。観戦者の需要を喚起し、地域の人々を巻き込むという視点で施策を立案、実行していくクラブへと変容しなければならないとの想いからだ。
■「プロスポーツビジネスに興味を持つ人材を増やさないといけない」
藤田晋CEOが掲げた「スピードアップ」という言葉が出る以前にも、岡田部長の口からも、
「世の中が刻々と変化していくそのスピードが速い。その変化に対応できるようプロスポーツビジネスに興味を持つ人材を増やさないといけないと考えています。これが当たり前なんだという固定概念を変えて新しいことをやっていく、そうした意見やパワーを持っている若い方を発掘しています」
という言葉があった。
2022年組からは町田、そして他クラブ合わせて計5名が就職する。「1→2→5」と就職者数が倍増してきている理由を町田ゼルビアの現場に取材すると、興味深い証言が上がってきた。
「インターン生にはとりあえずチャレンジさせて、失敗しても別に怒ることではないですし、それをまた次に活かしていこうという話をしてやっています。いま会社全体にそんな雰囲気もあるので」(萩原翠マーケティング部 コミュニケーション・マーケティング課 グッズマーケティング)
グッズを担当する萩原さんは自身が日々こなしているのと同等の仕事をインターン生に担わせ、そのパワーを頼りに、試合当日はブースを増設して売上を増やすという取り組みにも着手。
またパートナー事業部の伊東祥明さんはインターン生に、年間を通じてVIPルームを訪れるパートナー企業の顧客満足度を上げるための企画を任せているという。いずれも責任は正社員並みに重く、金銭との関わりもあり心理的なプレッシャーがかかりそうなものだが、インターン生は失敗を許容する企業文化に支えられ、このヤマを乗り越えているのだ。
FC町田ゼルビア「インターン募集」(11月17日23:59まで)https://www.zelvia.co.jp/news/news-214632/