古い体質を打破した新しい体質が、古びて旧弊と化す。成功を収めた企業が事業を拡大して大企業病に陥る。一度改革したら永遠に安泰──とはいかず、継続して変化を厭わない者が生き残るのだとしたら、サッカー界はまた変革の周期に突入しているのかもしれない。
Jリーグは、古きものを駆逐することで弱体化する一方だった日本サッカーを反転上昇させるに至ったが、開設から四半世紀が経ち、いわゆるIT企業の参入によって生き延びようとするJクラブが出現しているところを見ると、やはり新しい風を吹き込ませるターンなのだろう。
今回、藤田晋氏が代表取締役社長兼CEOに就任し「スピードアップ、スケールアップ」を掲げたFC町田ゼルビアも風穴を開けようとする勢力の一翼を担っている――。【FC町田ゼルビアの「新たな人材育成」】(#1、2のうち1)
■FC町田ゼルビアのインターン生が他のJクラブにも就職
町田は、サイバーエージェントの経営参画開始以来の4年間で欧州トップにも引けを取らないクラブハウスとグラウンドを建設し、ハード面のインフラが整った。ここで本体が直接経営のテコ入れに乗り出したと言えばいいのだろうか。ソフト面についても、ピッチ内に目を向けると高校サッカー界で実績を残している青森山田高校の黒田剛監督の招聘によって次の局面に入ろうとしているが、調べてみると実はピッチ外でも静かに改革が進んでいることがわかる。
インターン生を通常のワークフローに組み込み、正式採用のスタッフと同様の仕事ができるよう戦力化し、“卒業生”を輩出。他クラブに、そしてもちろん自社にと、入社段階で即戦力のビジネススタッフを送り込んでいるのだ。
この新しいインターン制度はサイバー社の経営参画以降に入社した岡田敏郎運営・広報部長が導入したものだ。採用は半期ごとだが期末は年度末で区切り、毎年その時期に鍛え上げられたインターン生たちが巣立っていく。大学1年生から始める者もいて経験年数はさまざまだが、最短の半年でも成長が認められる例には事欠かず、在籍期間に関わらずその効能は、少なくとも町田の社内でははっきりしている。
2020年末には1名、2021年末に2名の卒業生を輩出した町田のインターン制度からは、2022年末にはには5名が町田、および他クラブのビジネススタッフとして巣立つことになった。町田が自前で人材育成を手掛ける狙い、そして実際にそれができる秘訣とは何か――。