■最終節が象徴した驚きの力

 しかし、それでも終盤で4連勝して横浜FMを追い詰めたあたり、今シーズンの川崎には驚くべき粘り強さがあった。

 たとえば、リーグ戦最終節のFC東京戦。序盤戦では同じポゼッション志向のFC東京に対してチームの完成度の違いを見せつけ、FC東京のビルドアップにプレスをかけてボールを奪い続けた。そして、20分に脇坂のミドルシュートが決まって先制することにも成功したのだが、29分には抜け出したアダイウトンを飛び出したGKの鄭成龍がファウルで止めて一発退場となり、川崎は残りの60分を10人で戦うことになった。

 そして、逆転優勝を狙うには勝利するしかない川崎は、後半の立ち上がりに追いつかれてしまった結果、1人少ない状況でありながら点を取る必要が生じたのだ。そんな中で選手交代やシステム変更を使いながら、なんとかFC東京の守備陣に対して圧力をかけ続けて、相手のミスを引き出して点の取り合いを制して3対2で勝利して見せた。

“驚異の粘り”と言っていいだろう。2020年、2021年と圧倒的強さで独走して優勝した川崎だったが、今シーズンは苦しい戦いが続く中で粘り強く勝点を拾って首位に肉薄するという新しい経験をした。そして、その経験は将来の戦いで必ず生きてくるはずだ。

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