■歓喜が弾ける瞬間
そんな、ウルグアイ人の複雑な心情を、あのコカ・コーラのテレビCMはうまく切り取っていたというわけです。
代表の試合に興味がないわけはないのに、でも「どうせ勝てない」と思い、関心のないように振舞っているという彼らの複雑な心情が画面から伝わってきます。
アナウンサーの声のトーンが上がっていきます。
パスがつながった。シュートだ! ゴル、ゴル、ゴル、ゴル、ゴ~~~~~ル! ウルグアイが得点したようです。
すると、さっきまで無関心を装っていた客たちは抱き合って、跳びはねて喜びを表します。カウンターの向こうにいた店主も飛び出してきて、また少年も掃除道具を放り出して歓喜の渦に飛び込んでいくというわけです。
わずか30秒の中で、ウルグアイ国民の代表チームに対する複雑な気持ちを凝縮して描き切った、素晴らしいテレビCMでした。
ちなみに、1995年のコパ・アメリカは北アメリカ大陸のアメリカ合衆国、メキシコを含めて12か国が参加して開催され、ウルグアイは見事に決勝に進出。準々決勝でPK戦の末にアルゼンチンを破ったブラジルと対戦(開催国は、決勝までは絶対にブラジル、アルゼンチンとは対戦しない組み合わせになっている)しました。そして、ブラジルのトゥーリオに先制されたものの、後半の立ち上がりにパブロ・ベンゴエチェアが直接FKを決めて追いつき、PK戦でもウルグアイは5人全員が決めて優勝を果たしました。
ウルグアイの中心は、あのエンソ・フランチェスコリでした。