■大多数のウルグアイ人の気持ち

 そんな時代に僕はウルグアイで素晴らしいテレビCMを発見しました。1995年にウルグアイで開催されたコパ・アメリカ(南米選手権)を見に行った時のことです。

 それは、コカ・コーラのCMでした。同社はコパ・アメリカのオフィシャル・スポンサーですから、CMは大々的に流されていました。

 場面は、場末の(?)バールです。男たちが(たしか3人だったと記憶しています)、思い思いに軽食を食べたり、コカ・コーラを飲んだりしています。カウンターの向こうには、中年の店主が不愛想な顔をして立っています。下働きの少年が、黙々と店内を掃除しています。誰も、一言も言葉は発しません。

 店内に設置されたブラウン管テレビの小さな画面には、ウルグアイ代表の試合の中継映像が映し出され、実況アナウンサーが事細かに戦況を報じています。

 しかし、客たちも、また店主も少年も、試合にはほとんど興味を示していません。チラッ、チラッと時折画面に視線を送りますが、また食事に集中する。そんな繰り返しです。

 彼らの表情には、「どうせウルグアイは勝てないよ」という諦めが込められています。

 それが、大多数のウルグアイ人の気持ちだったのです。

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