■一瞬の「間」が勝敗を分けた
「間」は「魔」である。
10月30日に行なわれたJ1参入プレーオフ1回戦は、一瞬の「間」が勝敗に大きな影響を及ぼした。
3位のファジアーノ岡山が6位のモンテディオ山形をホームに迎えた一戦は、開始早々に試合が動く。5分、山形MF山田康太のスルーパスを受けたFWディサロ・燦・シルヴァーノが中央から抜け出す。フリーで放ったシュートはGKにブロックされたものの、こぼれ球をすかさず左足で蹴り込んだ。
J1参入プレーオフは、引分けならリーグ戦の上位チームが勝ち上がる。ビハインドを背負った岡山だが、慌てることなく試合を運んでいく。山形にとっても、決定的なアドバンテージではない。勝負を分けるのは次の1点だ。
山形リードのまま迎えた75分だった。山形の左SB川井歩が、左サイドからゆっくりと持ち出す。ペナルティエリアへ入るかどうかというところで、MFチアゴ・アウベスが彼を追い越した。オフサイドになることを避けた川井はパスを出さず、自ら仕掛けるもののボールは縦方向へ流れる。
川井が追いつく前に、ゴールラインを割りそうな雰囲気があったからなのか。岡山の選手たちの足が、ほんの一瞬だけ止まったように見えた。止まっていなかったとしても、警戒度の目盛りはほんの少し下がっただろう。
川井はボールに追いつき、クロスを入れた。結果的にサイドを深くえぐられた岡山DF陣の視線は、川井に集中していた。CBヨルディ・バイスの背後で、FWデラトーレがフリーになっていた。途中出場のブラジル人FWは川井のクロスをヘディングで突き刺し、勝負の2点目は山形が記録したのだった。