甲府に有利に働いたミラーゲームとウィングバックの攻防【「天皇杯準優勝」と「ルヴァン杯初優勝」広島のカップ戦ファイナル2連戦の明暗を分けたもの】(2)の画像
勝利に沸く甲府の裏で広島の選手たちは肩を落とした 撮影:中地拓也

 サンフレッチェ広島が、1週間で地獄と天国を味わった。天皇杯決勝ではJ2のヴァンフォーレ甲府に苦杯を喫したが、翌週のルヴァンカップ決勝では初戴冠を成し遂げた。似たような展開ながら、2つのファイナルの明暗を分けたものは何なのか。サッカージャーナリスト・後藤健生が勝負の綾をひも解く。

■試合を動かしたレッドカード

 膠着していたゲームが動き出すきっかけはいくつかある。

 選手の判断によって攻め方を変えることもそうだし、選手交代を使うことも含めて監督の指示が流れを変えることもある。そして、最も劇的な変化をもたらすのは「ゴール」である。

 1点リードされたチームは追いつくために攻撃力を強め、そして、リードしたチームはそれを守りに入るのか、ノーマルに戦って2点目を狙うのかという難しい判断を強いられる。セレッソ大阪FW加藤陸次樹のゴールが決まったことによって停滞していた試合は一気に動き出した。

 サンフレッチェ広島のパススピードが上がり、後ろの選手が前線を追い越していくダイナミックな動きも見られるようになった。だが、それでもC大阪の優位は変わらず、GK金鎮鉉(キム・ジンヒョン)からのパントキックやMFの鈴木徳真からの縦への鋭いボールなどによって何度か決定機も生まれた。そして、この時間帯に2点目を決められなかったことがC大阪にとっては痛恨事となった。

 それでも、C大阪がリードを保ったまま時計の針は刻々と進んでいった。ところが、76分にC大阪のDFマテイ・ヨニッチが裏に抜けだそうとした広島のナッシム・ベン・カリファを止めてイエローカードが示される。しかし、ここでVARが介入し、ヨニッチが肘撃ちをしていたとしてカードの色がレッドに変わってしまう。

 ゲームの流れを変えるもう一つの要素。それが、レッドカードである。この試合でも、流れは大きく変わっていく。

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