10月23日14時、J2リーグ最終節、ロアッソ熊本対横浜FCの試合がキックオフされる。日本サッカー界のレジェンドはそこで――。
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2022年シーズン限りでの現役引退を発表した中村俊輔は、日本サッカー界に力強い足跡を残した。日本代表でプレーした98試合のなかから、選りすぐりの8試合を振り返る企画。(#1~4のうち4)
■ドイツW杯の“リベンジ”オーストラリア戦「サッカー人生で初めて足がつった」
中村俊輔の日本代表におけるキャリアで、2007年アジアカップ準々決勝は大きな意味を持っている。06年のドイツW杯で1対3の敗戦を喫したオーストラリアとの再戦だったからだ。
69分にCKから先制点を奪われたが、3分後に追いついた。同点弾の起点となったのは中村である。背番号10が左サイドから供給したクロスを、ファーサイドのFW巻誠一郎が頭で折り返す。DFがクリアし損ねたボールを高原直泰が収め、鋭い反転から左足で決めた。
その後はスコアが動かず、1対1のままPK戦へ突入する。GK川口能活が相手の1、2本目を止めて流れを作り、日本は4対3で勝利する。中村はひとり目のキッカーを任され、右スミにズバリと決めた。
スコットランドのセルティックに所属していた中村は、高原とともに数少ない海外組であり、川口や中澤佑二とともにチームを支える経験者だった。イビチャ・オシム監督の信頼も厚く、この日も120分間走り続けた。守備でもハードワークした。
試合後には「サッカー人生で初めて足がつった」と明かした。そして言った。
「ドイツW杯のオーストラリア戦のことはあまり覚えていないと言ったこともあったけど、ずっと頭にあった」
チームにとっても中村にとっても、リベンジの一戦となった。