サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト・大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回は、勝敗は決めるが、試合の一部ではない?
■イングランドの「1人目」はジョージ・ベスト
イングランドのプロの大会で最初にPK戦が使われたのは、1970年8月5日、「ワトニーカップ(1部から4部まで各部から2クラブが招待されて戦ったプレシーズン大会)」の準決勝だった。2部のハル・シティと1部のマンチェスター・ユナイテッドが対戦、延長まで戦って1-1の引き分けに終わったとき、わずか39日前に正式認可されたPK戦が使われたのである。
記念すべき最初のキッカーはマンチェスター・ユナイテッドのジョージ・ベストだった。低いシュートをゴール右に決めた。そして最初の失敗は、デニス・ローだった。それまでにけった全員が成功して3-3で迎えたマンチェスター・ユナイテッドの4番手。ハルのGKイアン・マッケンジーは、初めてPKをストップしたGKとなった。そして同時に、彼はGKとして最初のPKをけることになり、力いっぱいのキックは派手にバーをかすって上にはね、マンチェスター・ユナイテッドに決勝進出を許すことになった。
これはもちろんイングランドの話である。欧州の他の国では、1950年代からPK戦が行われていたらしい。ユーゴスラビア・カップでは1952年から、イタリア・カップでは1958年から翌年にかけてPK戦が使われた。そしていくつかの国際親善大会などでも、再試合を行わず、PK戦で決着がつけられていた。