世界には、多種多様な文化がある。宗教も、そのひとつである。今年ワールドカップが開催されるカタールでもイスラーム(イスラム教)が広く浸透しているが、蹴球放浪家・後藤健生が初めてイスラームに触れたのは、東南アジアのある国だった。
■空に浮かぶ星と三日月
成田空港からクアラルンプール行きのマレーシア航空機に搭乗。出発してしばらくすると、後ろの席で日本人同士がサッカーの話をしているのが聞こえてきました。今なら普通のことでしょうが、当時はマイナー競技であるサッカーを話題にする日本人というのはかなり珍しい存在でした。
「いったいどんな人たちなんだろう」と思って振り返ってみたら、そこに座っていたのは『サッカーマガジン』編集部の千野圭一さん(故人)とカメラマンの今井恭司さん(現在もお元気)だったのです。
こうして、日本代表のことなども話題にしながら飛行機は目的地に向かって順調に飛行を続けました。
そして、いよいよ飛行機がクアラルンプールに向かって降下を始めた頃、ふと窓の外を見ると、くっきりと三日月が輝いていました。そして、三日月のすぐ横には明るい星が一つ輝いていました(たぶん、木星でしょう)。
三日月と星……。
そう、まるでイスラームのシンボルのようでした。たとえば、トルコやチュニジアの国旗にも、三日月と星が描かれていますよね。マレーシアの国旗の左上部にも、青地に黄色で月と星が描かれています(星は13州+クアラルンプール直轄市を表す14極星)。