川崎フロンターレが、力強さを取り戻している。第28節での2位のサンフレッチェ広島相手の快勝は、その象徴だ。大勝は偶然ではなく、導かれたものであった。3連覇へ向けてスパートをかける川崎の戦略を、サッカージャーナリスト・後藤健生がひも解く。
■重厚な25分間の勝者
広島が高い位置からプレスをかけてくるということは、たとえば両ウィングバック(右の野上結貴、左の柏好文)の裏にスペースができるはずだ。その裏にパスが通ってマルシーニョにボールが入れば、広島はそのドリブルを抑えるために後方に向かって走らざるをえない。あるいは、右サイドの家長昭博にボールが入れば、そこでキープすることで相手は全体が下がらざるを得ない。
こうして、キックオフ直後から、少しでも高いゾーンでプレーしようという広島と、少しでも相手を押し下げようという川崎の“力比べ”が続いたのだ。
この間の、重厚感溢れる攻防はとても強度が高く、また緊張感に溢れていて、どこかヨーロッパのリーグ戦を見ているような風情だった。
しかし、この両者がしっかり組み合っての“力比べ”は25分間ほどで決着がついた。
川崎のロングボールを駆使した攻撃を前に、次第に広島は全体のプレーゾーンを下げられてしまったのだ。つまり、“力比べ”は川崎の勝利に終わったわけだ。