■広島が10人になったのは清水のピンチにつながった
0-0の65分に塩谷司が退場し10人になった広島だが、これによって難しい試合になったのは清水の方だった。最終的に2点を奪われて敗れた清水だが、守備よりも攻撃が問題だった。「相手が構えてきたことに対しての戸惑いがチームの中にあった」と振り返る松岡は「(退場によって)相手はやることが明確になった」とした。5-3-1となった広島は、自分たちの攻撃に対し「ボールに行きながらクロスへの対応をするというやり方」になったという。
引いてライン間のスペースを消し、ウイングバックにサイドバックを対応させる。
柏と広島が見せたこの守り方は、湘南にも採用された。
サンタナもそこに言及している。「前から守備をしてくると思っていたが、引いてきた。自分たちが攻めるスペースがなかった。動いてもスペースを作ることができなかった。特に、自分たちのワイドの選手がプレーするスペースがなかった」
「前から守備をしてくると思った」というコメントが出るということは、そういう対策をされるという想定ではなかった、ということだ。サンタナは「試合の状況は予想していたものとは違った」とも口にしている。
引いてくるかどうか、というのは順位やアイデンティティーなど相手の状況次第で変わってくるが、サイドバックへの対応を明確にする、というシンプルかつ効果抜群の対策は3バック+ウイングバックでなくても可能だ。柏戦では後半に柏が4バック化したように見えたが、ネルシーニョ監督はそれについて、あくまでも戸嶋の役割を明確にしただけでフォーメーションは変えていない、としていた。フォーメーションに関係なく、誰がそこにつくかを明確にすれば同じ効果を生むだろう。
順風満帆に見えていた清水だが、ここにきて大きな課題が与えられた。果たしてこの対策を上回り、本当に強い、と思わせることはできるだろうか。
鍵となるのは、あくまでも攻撃だ。1-1という結果を松岡は「相手の攻撃の回数が多いことで受け身になった」と語った。調子を上げてくる過程で、清水はシュートの本数で相手を上回り続けていた。この日の清水のシュートは3本だけだ(湘南は15本)。攻撃は最大の防御、という言葉もある。あくまでも「自分たちがやるべきことを90分通してやり切れるようにすることが大事」(松岡)という姿勢で、更なる強さを目指す。
暗中模索の中で、右サイドでボールを持った原が逆サイドまで運び、山原との連携でラストパスまでいく、というプレーも飛び出した。この日の試合中にコミュニケーションを取り続けた選手たちは、きっと課題を乗り越えてみせるだろう。
■試合結果
清水エスパルス 1―1 湘南ベルマーレ
■得点
12分 チアゴ・サンタナ(清水)
90+6分 ウェリントン(湘南)