笛が鳴ると清水のベンチにいた選手たちが試合終了だと思って飛び出そうとするほど、5分と表示されたアディショナルタイムはいつ終わってもおかしくなかった。なんで終わりじゃないんだ、と手を広げてアピールする彼らは、直後に肩を落とすことになった。
湘南の茨田陽生がゴール前に浮き球を入れると、ボールはクリアしようとジャンプした立田悠悟の頭をぎりぎり越えた。その後ろに入り込んだウェリントンがヘディングシュートでネットを揺らし、90+6分、ついに試合は1-1となり、幕を閉じた。
ミッドウィークにマリノスを相手に不甲斐ない試合をしてしまった湘南が意地を見せたのとは対照的に、前節10人になった広島を相手に数的優位を活かせなかった清水はまたしても勝利を逃してしまった。
ゼ・リカルド体制となってから順調に上昇してきた清水は、この日のスタジアムに17751人を集めた。湘南のサポーターもアウェイ席を埋めたが、今季のIAIスタジアム最多入場者数を記録したのは、強い清水、という目で見られるようになったという証でもある。
私自身、東京・ガンバ・柏と清水の試合を続けて取材した際に、そう感じさせられた。
しかしこの日の清水は、チアゴ・サンタナのゴールで先制に成功したものの、強さを見せることができなかった。権田修一の大活躍で長い時間1-0を維持できていたが、勝てなかったという結果が妥当なものだと思えるほど攻守ともに上手くいかなかった。指揮官は「試合を通して苦しめられた」と正直に語った。しかも、現体制になってからのベストメンバーと言えるスタメンが用意されたにもかかわらず、だ。