■この日の清水は動き方の確認を繰り返していた
試合後、サンタナは「練習でやってきたことをうまく出せなかった」と振り返った。追加点を奪えずにいたせいで終盤に追いつかれた、というパターンではない。彼は前半から、プレーが止まる度に指揮官に駆け寄って動きを相談していた。
サンタナ以外も、この日の清水は動き方の確認を繰り返していた。飲水タイムにゼ・リカルド監督から送られる指示はいつもより多く、試合中にテクニカルエリアに2人がいる状態になってしまい第4の審判員から制される場面も。ハーフタイムには松岡大起と乾が互いに意見を出し合ったり、度重なるピンチを凌いだ権田は大声での鼓舞よりも修正を優先させようとしたり、と選手同士でも何度もやりとりしたが、どれだけコミュニケーションをとっても好転には至らず、暗中模索、という光景になった。
なぜこのようなことになったのだろうか。
清水は、攻撃での縦への動きが中央でもサイドでも存在することで強さを見せていた。
センターフォワードのサンタナが高い個の力を発揮して縦へのボールを収めるだけでなく、サイドバックとサイドハーフによる縦への攻撃でクロスまでもっていくことができる。
相手はサンタナに必ずセンターバックの1人をつけることになり、さらに内側を向いてボールを持つことができる乾とピカチュウに対応し、献身的に動き回りながら個でもボールを運ぶことができるカルリーニョス・ジュニオという厄介な存在もケアしなければならない。こうなると積極的に攻撃参加する清水のサイドバックに分厚い対応をとることは難しく、原と山原(試合によっては片山瑛一も)の良質なクロスに幾度もゴール前を脅かされてしまう。
その攻撃に、試合途中で対応してみせたチームがある。8月20日の柏だ。ネルシーニョ監督はウイングバックの戸嶋祥郎に対し「相手サイドバックの上下動にしっかりと対応する」という指示を与えて試合の流れをガラリと変えてみせた。ネルシーニョ監督は、コメントの中でこうも言っている。「サンタナ、カルリーニョス、乾を起点に速い攻撃を仕掛けてくるが、それに対応するにあたってライン間にスペースを空けてしまった」
それを踏まえて前節の広島戦を振り返ると、似たようなことが起きている。