■チーム全体の意識は確かにあったが、シュートまで持ち込むことはできなかった
遠藤保仁はボールの逃げどころとなる黒子としてチームを支えることよりも、自らボールを縦に運ぶ場面を増やして全体を押し上げることを重視したプレーを見せた。それによって金子翔太や大津祐樹が前線で動き回ることができる場面が増える、というところまでは、渋谷新監督が就任するにあたり、もともとの路線であった「立ち位置の優位性」に「まずは相手の背後をとってシンプルにプレーをするか」ということをプラスしたいと語っていた狙い通りのものだった。
攻撃でそういうプレーを増やしたい、というチーム全体の意識は確かにあったが、シュートまで持ち込むことはできなかった。
19分、マテウス・カストロの十八番である、あまりに理不尽なスーパーミドルを決められてリードされてしまった磐田は、より攻撃に出るしかなくなった。
しかし、レオ・シルバと稲垣祥がいる中央で勝負することは困難を極め、サイドにボールを動かして次の展開を考えるものの、名古屋のウイングバックである相馬勇紀と森下龍矢の攻守における積極性によって落ち着けず、バックパスが増えてしまった。
突破を試みれば名古屋の出足の鋭さに上回られ、一か八かで裏のスペースを狙ってみればセンターバックの中央を務める藤井陽也に落ち着いて対応された。高い位置でプレスをかけるところからキッカケを得ようとしても、ウイングバックとボランチにセンターバックの中谷進之介と丸山祐市が大きく開いた形で加わりボールを持つ名古屋はそれも許してくれなかった。