■ワールドクラスの選手はクロスの際 “エリア内を見ない”

 ただ、ワールドクラスの選手は、ペナルティエリア内の状況を見ずにクロスを上げる場面も多いようだ。

「欧州のビッグクラブで活躍するようなもっと上のレベルの選手は、ペナルティーエリア内を見ていないのにクロスを上げるべき場所が分かっているんです。

 それがなぜ起きているかというと、エリア内を見なくてもそこで何が起きているか分かるほどの経験値があるからです。

『こういう展開になったら彼はここに走るだろうな』ということが理解できていると、わざわざ顔を上げる必要がなくなるんです。間接視野によってチラっとエリア内を見ているだけですね。これは、チャンピオンズリーグで活躍しているような世界トップクラスの選手がやっていることですね」

 また、個の能力によってだけではなく、チームとしての決め事によって“見なくてもパスが出せる”状態をつくることがあるという。実際、坪井さんがスペインにいた頃も、攻撃の自動化を図るために、指導していたチームで決め事をつくっていたという。

「サイドチェンジをして攻撃しようとして練習で落とし込みのシャドートレーニングをする際、ボランチがパスを受けて逆サイドにパスを送る時には、『逆サイドを見ないでサイドチェンジして』と言っていました。要するに攻撃スピードを上げるために自動化をしたいんです。

 結局、“見て判断する”ということをしていると遅くなるので。チームでは『走っていない選手が悪い』って言われるくらいまで、サイドチェンジを自動化して徹底的に落とし込んでいましたね」

 韓国戦では、相馬の先制点のアシストに留まらず、トランジションやボール保持の局面でも躍動し、MOM級の活躍を見せた藤田。ファンからはカタールワールドカップメンバー入り、海外挑戦を推す声も多く挙がっている。坪井さんが語ったような、“エリア内を見ずとも正確なクロスが上げられる”ワールドクラスの選手になるよう、20歳MFの今後の成長に期待したい。

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