【E-1「韓国を3-0撃破」】“先制点をアシスト”日本代表MF藤田譲瑠チマの絶妙クロスを「スペインサッカーの本質を知る男」坪井健太郎氏がディープ解析!「左足のトラップ」と「戦術メモリー」が導いたハイレベルプレー!!の画像
藤田譲瑠チマ   撮影:中地拓也

 7月27日に行なわれたE―1選手権の韓国代表戦。サッカー日本代表は愛知県・豊田スタジアムでの試合に3-0で勝利。見事4大会ぶりの優勝を果たしたが、そのきっかけとなったのは藤田譲瑠チマがアシストした相馬勇紀の先制点だった。
 日本代表をE―1優勝に導いた20歳MFが右足で上げたその正確なクロスを、2008から2019年までの12年間、スペインの地で指導者を務め、数々の実績を残してきた「世界のトップを肌で知る男」坪井健太郎さんが分析してくれた。

【プロフィール】坪井健太郎 つぼい・けんたろう 1982年、静岡県浜松市生まれ。静岡学園卒業後、指導者の道へ進む。安芸FCや清水エスパルスの普及部で指導経験を積み、2008年にスペインへ渡る。バルセロナのCEエウロパやUEコルネジャで育成年代のコーチを務め、リーグ優勝・昇格を経験。2018-19シーズンにはユース1部のカテゴリーであるディビシオン・デ・オノールで FCバルセロナやRCDエスパニョール、RCDマジョルカといったプロクラブが戦うリーグで6位という上位争いに食い込んだ経験を持つ。『サッカーの新しい教科書 戦術とは問題を解決する行為である』『サッカー 新しい守備の教科書』『サッカー新しい攻撃の教科書』(いずれもカンゼン刊)が大好評発売中。

■カギになった「左足のトラップ」と「戦術メモリー」

 0-0で迎えた49分、藤田は右サイドでボールを受けると、左足でワントラップして右足でクロスを上げ、先制点をアシスト。ファーサイドから走り込んだ相馬勇紀にピンポイントで合わせたこのクロスは、いったい何が凄かったのだろうか。

「まず良かったのは、左足で止めたということ。これを右足で止めていると体が外側に向いてしまうので、ペナルティエリア内の情報を認知できなくなるんです。ボールをコントロールした場所もよかったのでスムーズにクロスが蹴れましたよね。

 私の視点では藤田選手のボールの受け方を見る限り、ラストパスを出すことをトラップの前に決めていたと思います。2タッチ目でパスを出すことが前提で、すぐ蹴れる場所にボールをコントロールしていますよね。

 あとは、どのスペースに蹴って、誰に合わせるのかを決めるだけです。ペナルティエリア内の状況を確認しながら『ファーサイドにラストパス』というプレー選択をしているように見えます。トラップと同時に顔を上げて、エリア内の状況を認知しながら蹴る体勢に入っているので、キックモーションの途中でクロスのコースを決断しているのかなと思います。

 あの角度でボールをもらったとき、セオリーとしては、ファーサイドが守備陣にとって手薄になるんです。ファーサイドの選手はボールウォッチャーになりやすいので。藤田選手はそのことを分かっていて、感覚的にクロスを上げた部分もあると思いますね。

『このシチュエーションではファーサイドが空きがちで、ポジション的には相馬選手が走り込んでいるだろう』という前提があってこそのクロスだと思います。これまでのプレー経験による“戦術メモリー”の蓄積が活きているんでしょうね。小さい頃から積み重ねていれば、戦術メモリーは藤田選手のような若手や10代の選手でも豊富に蓄積されています」

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