■中東での大歓迎
そういえば、サウジアラビアの強豪アル・ヒラルの会長だったバンダル殿下と握手をした時も、その掌の柔らかさに驚きました。
アル・ヒラルに行ったのは1997年3月。フランス・ワールドカップ一次予選を観戦するためにサウジアラビアを訪れた時のことです(「蹴球放浪記」第11回「ジッダ空港放置プレー」の巻を参照)。
紅海沿いのジッダで試合を見てから首都のリヤドに向かい、サウジアラビアの協会を取材し、アル・ヒラルとアル・ナスルを見学しました。どちらも、サッカーだけではなく、陸上競技やバレーボール、水泳、柔道といった様々なスポーツが行われている総合スポーツクラブでしたが、驚いたのは体育館やクラブハウスなど両クラブの施設がそっくりだったことです。違いは、アル・ヒラルの施設が青と白、アル・ナスルは青と黄色に塗分けてあることだけです。
これは、どちらのクラブも、政府が出資して同時期に建設されたものだからです。サウジアラビア政府は、膨大な額の石油収入の一部をスポーツに注ぎ込んでいるのです。国民の福祉のためでもあり、同時に国威発揚のためでもあります。
つまり、スポーツクラブは国家として自慢の施設なのですが、入国することすら難しいサウジアラビアのクラブ取材に外国人記者が訪れることなど滅多にないでしょう。だから、彼らは僕を大歓迎してくれたのです。