サッカーにも、機械化の波が押し寄せている。今年開催されるワールドカップにも、あらたな変化がもたらされる。サッカーはテクノロジーといかに付き合っていくべきなのか、サッカージャーナリスト・大住良之が検証する。
■「私は機械になります」
6月13日にカタールのドーハで開催された国際サッカー評議会(IFAB)の年次総会で、「半自動オフサイド・システム」が11月~12月のワールドカップ・カタール大会で導入される可能性が高いことが明らかにされ、大きな話題になっている。
「ついに副審がロボットになるのか」―。そう感じた人も多いかもしれない。無数といっていいほどの要素を総合するだけでなく、白でも黒でもない「グレー」なゾーンに白黒をつけなければならない、いわば「アナログ」な主審の仕事と違い、副審の仕事の重要な部分は「デジタル」と言うことができる。ボールがタッチラインやゴールラインを割ったかどうか(ゴールの判定もそれに含まれる)、味方がプレーした瞬間に、ある選手が相手チームの後方から2人目の選手より前に出ていたかどうか、それは「○か×か」というはっきりした事実の問題だからだ。
「私は機械になります」。そう話したのは、2014年ワールドカップを前にした相樂亨副審だ。
西村雄一主審とのコンビで2回目のワールドカップに立ち、しかも第2副審は同じ日本の名木利幸。「チーム西村」は間違いなく「アジアナンバーワン」で、2014年大会に参加する世界の審判チームのなかでも高い評価を受けていた。相樂副審の言葉には、その自信があふれていた(その自信どおり、「チーム西村」は開幕戦にアポイントされる)。