■人間業とは思えないオフサイド判定

 タッチラインの判定はともかく、オフサイドの判定は人間業とは思えないときがある。プレーの瞬間を間接視野とキックの音でとらえ、その瞬間の守備ラインと攻撃側の選手たちの位置関係を瞬時に見極める―。不可能を可能にすると言っていい能力を磨くために、副審たちは信じ難いトレーニングを行っていた。

 その4年前のワールドカップ南アフリカ大会の期間中に、何回かレフェリートレーニングがメディアに公開された。そこで行われていたトレーニングは驚くべきものだったのだ。ペナルティーエリアの左角にDFが立ち、ハーフライン、センタースポットあたりにFWが立つ。ボールをもつコーチはセンターサークル内。当然、副審はDFと並ぶラインだ。コーチの笛でDFとFWがスタート。しかも全速力だ。副審はDFのダッシュに懸命についていく。そしてふたりがすれ違うかどうかのタイミングでコーチが前方にボールをける。それがオフサイドかどうかを、副審は見極めなければならない。

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