大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第91回「ワールドカップ予選大陸間プレーオフの長い物語」(5) マンチェスター・ユナイテッドとワールドカップ予選の間にあった「運命のいたずら」の画像
W杯予選との不思議な縁がユナイテッドの歴史に影響を与えた 写真:渡辺航滋

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。重箱の隅をつつくような、「超マニアックコラム」。サッカージャーナリスト・大住良之が今回つづるのは、「最後の一座へ、地球を半周して」。

■アマチュアチームの奮闘

 1958年1月15日にイスラエルのラマトガン・スタジアム(テルアビブ郊外)で第1戦が行われた。ウェールズ代表はキプロスの英軍空軍基地からの特別機でテルアビブに向かったが、ボールを積み忘れ、試合の準備はボールなしのトレーニングに限られた。

 全員がプロのウェールズに対し、イスラエルはアマチュア。ウェールズの圧倒的な優勢が予想されたが、5万5000人の熱狂的なサポートに支えられたイスラエルが奮闘し、ウェールズの先制点はようやく前半38分、イボール・オールチャーチの得点だった。後半18分にデイブ・ボーウェンが追加し、ウェールズが2-0で先勝した。

 3週間後にカーディフのニニアン・パーク・スタジアムで行われた第2戦で、イスラエルがさらに奮闘する。鼻骨を折りながら好セーブを連発するGKヤーコフ・ホドロフの活躍で後半なかばまで失点なしに抑えたのだ。ウェールズがようやくホドロフの守るゴールを破ったのは後半31分。初戦でも先制点を決めたI・オールチャーチが個人技でゴールに迫り、角度のないところからイスラエル・ゴールの天井に突き刺した。そして4分後には、落胆したイスラエルにとどめを刺すように、クリフ・ジョーンズが2点目を決め、第1戦と同様、2-0のスコアで試合を終了させた。

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