■メキシコとの「再戦」
巨大なスタンドが屹立するアステカ・スタジアム。周囲を取り囲む切り立つ断崖の底に立ち、まるで天上から滝のように降り注ぐ喚声に押しつぶされそうになりながら、なでしこジャパンは粘り強く戦い、後半6分に小林弥生が先制、すぐに同点とされたが、同26分には宮本ともみが勝ち越しゴール。再び追いつかれたものの、2-2のまま試合を終えた。
1週間後、東京の国立競技場では1万2743人のサポーターの声援を受けて2-0の勝利。澤穂希と丸山桂里奈のゴールで4大会連続出場を決めた。
なでしこジャパンは、大橋浩司監督の下で戦った4年後の2007年大会予選でも、メキシコと大陸間プレーオフを戦った。対戦順序が逆になり、国立競技場での初戦を澤と宮間あやの得点で2-0と勝つと、1週間後、こんどは海抜2667メートルのトルーカで行われた第2戦で荒川恵理子が先制、逆転されて1-2で敗れたものの、5大会連続の女子ワールドカップ出場を勝ち取った。
2011年の女子ワールドカップ優勝はこうした逆境を乗り越える経験で鍛えられたチームワークと精神力に支えられたものでもあった。大陸間プレーオフという肉体的にも精神的にも巨大な試練を勝ち抜くそうした経験が、「SAMURAI BLUE」には、まだない。