こうして、代表でも出来ることをアピールした長友とホームでの最終戦となる小川という両サイドバックの動きを使って、FC東京は押し込まれている時間帯にも何度か反撃の姿勢を見せていた。
つまり、この試合は緻密な戦術的攻防も面白かったが、同時にそれぞれの事情を抱えた選手たちの動きが目につく試合でもあったのだ。
■試合前からのアルベル監督の指示
サイドからの攻撃で対抗しようというFC東京だったが、ボールを奪ってもなかなか攻め込むことができない。
何が足りなかったのか……。
それは、2列目から後ろの選手のサポートだったり、相手DFラインの裏へ抜け出す動きだった。
流れが変わったのは飲水タイム後の27分だった。
FC東京の最終ラインの森重真人から左のアダイウトンにパスが通り、アダイウトンが受けた瞬間に、左インサイドハーフの松木玖生がペナルティーエリアの角まで飛び出してアダイウトンからのパスを受けてグラウンダーのパスを送ると、走り込んでき渡邊凌磨がシュートを放った。
シュートはゴールの枠から大きく外れたが、右サイドハーフの渡邊がゴール正面でパスを引き出してシュートをしたこの場面自体は、様々な面で大きな転換点となった。
FC東京のアルベル・プッチ監督によれば、これはすべてプラン通りだったのだという。
つまり、鹿島は激しいプレッシャーをかけてくる。質が高く、守備のインテンシティーも高い。だが、「連戦の疲れもあるだろうし、気温が高くなったので(公式記録によれば開始時で28.2度)、20分を経過すれば必ず相手のインテンシティも下がる」と事前に読んでおり、選手たちにも試合前にそれを伝えていたというのだ。
そのため、アルベル監督は前半の24分頃の飲水タイムの時点で攻撃に移ることを指示。選手たちも、すぐにその指示に呼応したのだ。