■一国のGDPを上回るスター選手の年俸

 そしてその結果、サッカーという競技の性質上、健全に競技を継続するには「週1試合」が重要な要素であるはずなのに、無制限といっていいほど「週2試合」が増やされ、そして平然と「オフシーズン」が削られ、選手たちは「人間らしさ」を取り戻す時間を与えられないまま何年間も走り、戦い続けることを強いられているのである。もちろん、それに値する対価は与えられる。それも過剰に。

 世界銀行の2020年の統計によると、世界で最もGDP(国民総生産)が低い国はポリネシアの島国ツバルで、年間約5000万ドル(約60億円)だという(ただ、ツバルはけっして「最貧国」ではない。東京の品川区ほどの国土に住むのはわずか1万1792人(2020年)。1人あたりの国民総生産は、世界でも中位の部類になる)。

 現代の世界のサッカーには、少数のスーパースターながら、1人のサッカー選手が一国のGDPの倍もの年俸を得ているという事実がある。そこまでいかなくても、ツバルのGDPの半額ほどを稼ぐ選手は山ほどいる。選手生命に影響を与えるほど休まずにプレーしても、得るもののほうが多いと考えている選手も多いかもしれない。だがそれが、サッカーという競技の健全なあり方であるとは、私はけっして考えない。

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