サッカージャーナリスト・後藤健生は、古今東西のサッカーの研究に余念がない。時には百年以上も前に設立されたフットボールクラブの取材に赴くこともある。その豊かな歴史に触れ、サッカーへの思いはさらに深まっていく。
■伝統あるホテルにて
ホテルに着いてすぐテレビのスイッチを入れたら、ニュース番組で「各地で大型トラックが強風のために転倒している」という迫力ある映像が映し出されていました。その後、ホテルの近所を散歩しようと思って外に出たのですが、本当に海からすごい風が吹き付けていました。
泊まっていたのはイングランドの北東部、サンダーランドにある「ローカーホテル」。ローカーテラスという大通りを渡ると、一面に北海を見渡すことができました。埠頭の先には小さな灯台も見えていました。そして、冬の北海は、冬の日本海同様に暗い空の下、白波が立って荒れていました(日本海側の皆さん、申し訳ない。あくまでもイメージです)。
なんで、冬の寒い時期にそんな寒そうなロケーションのホテルに投宿したのか?
それは1999年12月のこと。『サッカー批評』第6号のイングランド特集の取材でサンダーランドを訪れた時のことでした。
いわゆるビッグクラブではないが、歴史と伝統のある地方クラブの実情を見てみたかったので、サンダーランドAFCとシェフィールド・ウェンズデーを取材しようというのが目的でした。