■吉田が取った行動

 ベトナムサポーターのアウェイ席は、後半で言うとゴールマウスを守っていた川島永嗣の左斜め後ろ。そのサポーターに便乗して、メイン側の記者席の後ろからもベトナムサポーターからの声も響いていた。

 試合終了後、ベトナム代表のパク・ハンソ監督はサポーターに手を振って感謝を示していた。アウェイに駆けつけたサポーターに感謝を示すこの行動を否定はしない。しかし、代表関係者やスタッフのうち、何人かは観客に対して鎮まるようにアピールすることも必要だったはずだ。

 そんな中、日本代表の主将が試合中にある行動を取った。

 それは田中碧のシュートがゴールネットを揺らし、VARでチェックされている最中だった。73分過ぎ、最終ラインの吉田が後ろを振り返り、何かジェスチャーをしている。川島への指示ではなかった。それはベトナムサポーターに向けてだった。

 両手の掌を下に向けて、「抑えてほしい」というジェスチャー。そして、両手の掌を合わせて懇願するジェスチャーも見せていた。試合中に、しかも相手サポーターに向けて主将がここまでやるのは珍しい。試合中の吉田も歓声が大きいと感じていたのだろう。

 ベトナム代表監督さえ、しなかったことを吉田自らが行なっていた。吉田が語っていた通り「大勢のサポーターの前でプレーできる」場であっただけに、節度ある行動が求められる。

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