最終予選の間は、これまで通り大迫のワントップで攻撃を組み立てるべきだとしても、いずれは大迫の後継者選びに手を付けざるを得ない……。僕はそう思っていた。

 大迫と同じようなタイプがいないとすれば、前線でスピードを生かしてプレーする古橋亨梧か前田のような選手にするのか。あるいは、総合的なストライカータイプの上田がいいのか……。さまざまな選択肢はあるものの、明確な答えはないのが現状だ。

 今月末に予選が終了したとしても、11月のワールドカップ開幕までわずか半年強しかない。その間に組める国際試合の数はごく限られている。新型コロナウイルス感染症拡大のために予選の日程が変更になったため、予選終了から本大会までの日数が足りないのだ。

 従って、予選が終了すればすぐにも大迫の後継者選びに着手しなければいけない状況だった。いや、「オーストラリア戦に勝利して予選突破が決まったら、最終のベトナム戦からその後継者選びの作業に着手すべきだ」と僕は思っていた。

 ところが、大迫の不在という状況が生まれたことによって、後継者選びの作業が思わぬ形で始まることとなったのだ。

■「運」を持っている林

 今回招集された“後継者候補”は上田と林。オリンピック代表でも長くプレーして期待されていた上田だが、足踏み状態が続いていた。Jリーグでも素晴らしいゴールを決めることも多いものの、コンスタントに良いプレーができているとは言い難い。そろそろ、大化けしてもらいたいところだ。

 一方の林は、昨年の東京オリンピックではバックアップとして招集されたのだが、大会直前にレギュレーションが変更となって、バックアップも含む22選手がプレー可能となったことで出場が可能となり、さらに上田が出遅れたことでチャンスをつかみ、5試合に先発出場することとなった。そして、今回も大迫、前田の不参加によって追加招集されるという幸運に恵まれた。そうした「運」を持っている林が、このチャンスをものにしてしまう可能性もあるかもしれない。

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4