1998年と2010年、2回のワールドカップで日本代表を率いた岡田武史監督は「サッカーには正解はない」と言った。同じ試合を別の選手や戦術でやり直し、どちらが正しかったかを検証することなどできないから、「正解」を特定することはできない。だから、最善と思って決断したことを実行するしかない―。

■「完璧」だったサウジアラビア戦

 前田や三笘を早くから(たとえば昨年10月から)使っていればどうだったか、それはわからない。しかし森保監督の決断は、大迫と南野の能力を信じ、使い続けることだった。昨年中に行われた6試合で日本が挙げた総得点は5。「複数得点」はオーストラリア戦(2-1)1試合しかなかった。それでも森保監督は大迫と南野を先発で使い続け、ことし1月のシリーズ(1月27日の中国戦と2月1日のサウジアラビア戦=いずれも埼玉スタジアム)でついに彼らの「フィニッシングタッチ」に血が通い始めた。そしてこの2試合をともに2-0で勝ち、現在の状況までもってきた。

 とくにサウジアラビア戦は2019年1月のアジアカップ準決勝(3-0イラン)以来日本代表が見せた最高の内容の試合で、守備の安定、攻撃のスピード感、そしてフィニッシュの形まで、申し分のない試合だった。グループ首位を独走する相手をほぼ「完璧」と言っていい試合で叩きのめしたことは、森保監督と選手たちが苦しみながらも昨年から取り組んできたことが結実したことを示している。

  1. 1
  2. 2
  3. 3