■アブラモビッチは「クラブのため」と言うが…

 西側諸国は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領などロシアの要人や「オルガルヒ」と呼ばれるロシアの新興財閥に対して資産の凍結などの制裁を決定した。

 3月10日には、英国政府がオルガルヒの1人であるロマン・アブラモビッチの資産凍結を決定。この決定によって、イングランド・プレミアリーグチェルシーは選手・スタッフへの給与の支払いや試合開催は認められたものの、入場券やグッズの販売などの営業活動は禁止され、選手の移籍交渉もできないこととなった。もっとも、英国社会ではフットボール・クラブは“公共財”と考えられているので、いずれは政府から救済策が示されるのだろうが、いずれにしても、これまでのように潤沢な資金を使ったクラブ経営が不可能になることは間違いない。

 これより前、ロシアの侵略戦争が始まるとすぐに、アブラモビッチはクラブ売却の意向を表明していた。「それがクラブのためになる」というのが表向きの理由であり、「売却益をウクライナの犠牲者救済のために寄付する」とも伝えられた。

 しかし、実際のところは「制裁で資産が凍結される前に出来る限り資産を現金化して、英国政府の手が届かない“安全な”場所に移しておこう」というのがアブラモビッチの本音だったはずだ。

(2)へ続く
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