いまでは多くの日本人選手が海外でプレーする。その姿が日常となって久しいが、私たちは選手がヨーロッパでプレーする意味を正しく理解しているのだろうか。サッカージャーナリスト・大住良之が語りかける。
■欧州で最も成功している長谷部
ドイツのブンデスリーガで15シーズンもプレーする長谷部誠は、2008年1月に浦和レッズからヴォルフルブルクに移籍、主力選手となって2008/09シーズンにはブンデスリーガ優勝を経験、2013/14シーズンにはニュルンベルクで不運な1年間を過ごしたが、2014年夏にフランクフルトに移籍、以後なくてはならない選手となり、30代の終盤を迎えた現在も活躍している。フランクフルトですでに8シーズン目。ポジションをボランチから3バックの中央に移しながらも高い信頼を得ている長谷部は、現在欧州でプレーする日本人で最も「成功」した選手と言えるのではないか。
長谷部のことを考えると、常に思い起こされるのが奥寺康彦だ。1977年、日本のサッカーが世界でまったく認められていない時代にヘネス・バイスバイラー監督の強い希望でブンデスリーガの名門1FCケルンに移籍、左ウイングとしてプレーし、1シーズン目にブンデスリーガとドイツカップの2冠に貢献した。しかし1980年、監督交代で出番が減ると、出場機会を求めて2部のヘルタ・ベルリンに活躍の場を求めた。残念ながらヘルタは昇格を逃したが、その昇格争いに競り勝ったベルダー・ブレーメンのオットー・レーハーゲル監督が奥寺に目をつけた。