■方向感覚が狂う理由が判明

 太陽のせいだったのです。

 日時計の説明を思いだしてください。東から上った太陽は南の空を西に向かって、左から右に向かって動いていくのです。それを感じ取って、僕たちは(方向感覚の良い人は)東西南北の方向を考えながら行動するのです。

 ところが、ブエノスアイレスは南半球にあるのです。東から上った太陽は北の空を右から左に向かって動いて、西に沈むのです。

「太陽が北側にある」ということは十分に意識していたのですが、太陽が「左から右」ではなく、「右から左」に動くんだということに考え及ばなかった。それが、ブエノスアイレスで道に迷った原因でした。

 原因さえ分かれば、道に迷うことはありません。その後、南半球には何度も行っていますが、太陽の動きに惑わされたことは一度もありません。

 もし、人類の文明が北半球ではなく南半球で発展したとしたら、たぶん時計の針は左回りになっていたことでしょう。

PHOTO GALLERY ■【画像】太陽が「右から左に」移動して沈んだリバープレート・スタジアムの夕焼け
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