サッカーは残酷である。白黒がつくのはもちろんだが、資金力が大きな要因となって、勝者と敗者を分かつのだ。
ヨーロッパではその差を埋める新たな案が浮上しているが、日本にとっても「対岸の火事」ではない。マネーによるパワーゲームで生き残りを懸ける小国の試みを、サッカージャーナリスト・大住良之が読み解く。
■合同リーグ創設へ最適な両国の相性
オランダとベルギーは中世においては「ネーデルラント」と呼ばれるひとつの地方で、周辺の大国から常に支配を受ける地域だった。オランダがスペインの支配を抜けて独立したのが、日本でいえば江戸時代の初期にあたる17世紀のなかば。ネーデルラントの南部、現在のベルギーに当たる地域は、その後もスペインやフランス、オーストリアなどの支配を受け続けていたが1815年にオランダに併合され、1839年に独立を果たした。
オランダは面積約4万1864平方キロ、日本の九州とほぼ同じで、人口は1755万人。ベルギーは面積約3万528平方キロ、関東の7都県合計より小さく、人口は1149万人。ともにEUに加盟しており、人の行き来に問題はない。この2か国がいっしょになって「国内リーグ」を構成しても、何の問題もない。しかもベルギーの主要クラブが集中する北部ではオランダ語(ベルギーでは「フラマン語」と呼ばれる)が使われている。
2000年には、欧州選手権(EURO)の決勝大会では初めてとなった「共同開催」がオランダとベルギーで行われ、大会中は何のトラブルもなかった。これほど「合同リーグ」に適した国同士というのは、他に例がないのではないか。