■アジアへと広がった文化

 世界のサッカーでは、1980年代にサポーターは「諸悪の根源」のように思われていた。暴力的な行為を繰り返す「フーリガン」となり、サッカーにとっての最大の問題となっていた。しかし1990年代にはいって誕生した日本のサポーターはそうした世界の情勢をよく知り、「他山の石」としていた。何をしてはいけないのか、クラブやリーグやサッカーのためを考えて行動できる人びとだった。そのカラフルで喜びに満ちたサポーターは、世界のサッカーにも影響を与えた。

 1998年にはJリーグの理念実現に大きな役割を果たしたサポーターは、やがてAFCチャンピオンズリーグのスタートとともにアジア各地へと進出していく。2007年、浦和レッズがその圧倒的でカラフルなサポーターとともにアジア各地を転戦したことで、アジアのサッカーに「サポーター文化」が生まれた。いま、アジア各国のサポーターたちは、実にJリーグ的な楽しさをもっている。

 試合数やゴール数、選手や監督の数は記録に残る。しかしサポーターは「入場者数」という数字のなかに埋もれ、誰がどんな思いをもって参加し、ピッチ上の選手たち、チームに愛情を注いできたか、具体的な数字や記録では見ることができない。しかし30年間のJリーグを牽引してきたのは、間違いなくサポーターたちの献身と情熱だった。サポーターなくして、Jリーグの活動が全国に広まり、次々と加盟希望クラブが誕生するような状況は生まれなかっただろう。

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