■ビッグ・ビジネスより優先されるべきこと
サポーターはそれぞれのクラブのホームタウンの若者たちだ(30年という歳月を経て、いまではかなり高齢のサポーターもいるが…)。その若者たちが情熱を傾け、力を合わせて何ごとかを成し遂げるきっかけをつくったのが、Jリーグだった。Jリーグのクラブが核になり、そこに若者たちが集まってサポーターの文化が生まれた。そしてクラブのホームタウンに新しい活力となった。30年間で40都道府県、58クラブにまで「Jリーグ・ムーブメント」が広がったのは、誰よりもサポーターの功績だった。
とすれば、「Jリーグの未来」もはっきりと見えてくるはずだ。サポーターたちにさらに楽しんでもらい、親から子へ、子から孫へと引き継いでホームタウンの文化にしていくことだ。最も重要なJリーグの課題は、欧州のビッグリーグのような法外な収益を生むことではない。2017年に締結されたDAZN(ダゾーン)との放映権契約により、現在のJリーグはそれ以前とは比較ができないほどの資金をもち、「ビッグリーグ化」へのビジネスを加速させようとしているように見える。
私は、それを否定するわけではない。しかしそれ以上に優先されるべきことは、サポーターたちにより楽しんでもらうリーグにすることだ。サポーターの年間パスの優待制度、より創造的な活動の振興、さらに、世界のサポーターにはない新しい日本のサポーター像の構築…。「百年構想」の30年が経とうとしているいま、Jリーグはもういちどサポーターとしっかり向き合うべきだと、私は考えている。