後藤健生の「蹴球放浪記」第92回「売りつけられた偽ファーストクラス」の巻(1)日本の主審がさばいたワールドカップアジア予選「シリアとイランの真剣勝負」の後で

■テヘラン行きを前に不穏な空気

　すると、シリア航空の窓口の係員は「エコノミーはもうおまへんで。ファーストクラスでよろしか？」と言うのです。

　ううん、あまり高額な出費は避けたいのだが……。「お、お、いくら……？」と僕。

「４６７ＵＳドルでっせ」

　まあ、ファーストクラスで５万円ならしゃあないか。僕は、そのファーストクラスを予約しました。で、大変だったのは料金の支払いです。

　窓口の人が言うには、近くの国営銀行の窓口でＵＳドルを両替してくる必要があるというのです。

　地図で場所を教えてもらって、歩いて国営銀行まで行って両替をしてきました。すると、「いや、“航空券代金として”と書いた領収書をもらってきてくれ」と言うのです。

　仕方がありません。もう一度、銀行まで行って新しい領収書をもらってきました。幸いなことに、銀行の方では仕組みがよく分かっていたのでしょう。すぐに領収書を作ってくれました。

　こうして、ようやくテヘラン行きの航空券を手に入れて、僕はダマスカスの空港に向かいました。