■救世主はカネでは買えない
そして、ここに時間をかけていいほど、今のバルセロナに余裕はない。実際、チャンピオンズリーグ敗退で、今季の予算額は減る見込みだ。ベスト16進出(960万ユーロ)、ベスト8進出(1060万ユーロ)で得るはずだった2020万ユーロ(約26億円)の資金が、計算できなくなった。
その余波はチーム状態にも及ぶ。補強に影響があるからだ。バルセロナが今冬の移籍市場でアタッカーを補強しようとしているのは、公然の秘密として知られてきた。しかし、そのための資金がない。
これまで、アーリング・ハーランド(ボルシア・ドルトムント)、アレクシス・サンチェス(インテル)と複数候補が挙げられていたが、実際に獲得に至ったのはフェラン・トーレス(マンチェスター・シティ)だった。獲得のために融資を受けたというが、その資金集めの出どころも含めて、「その場しのぎ」の印象は否めない。
バルセロナに必要なのは、プレースタイル/プレーモデルを理解した選手あるいはそれに合致した選手だ。もしもこの夏、どうにかして資金を集めて獲得のチャンスが生まれたとしても、すでに世界的なストライカーとなったハーランドが本当に救世主になるのかと問われれば、その答えは「ノー」である。
保守的なレアル・マドリードについては現在重視・未来軽視で、カンテラーノを重宝するバルセロナについては現在軽視・未来重視だと見えるかも知れない。しかしながら目の前の1試合に勝つことで未来を切り開いていこうとするレアル・マドリードと、未来に向かおうとしながら基礎が整っていないバルセロナでは、大きな違いがある。
その差が2強の明暗を分けたことは明白だ。2021-22シーズンの間にその差を埋めるのは相当に難しい作業になるだろう。