■ぶっつけ本番を支えた「相互理解」

 サウジアラビア戦で失点につながるミスをした柴崎岳に代えて、守田英正を起用するのは想定内だった。しかし、サウジアラビア戦からオーストラリア戦までは中4日である。準備期間は限られている。システムに手を加えることは、誰にも予想できなかったと言っていい。

 4-3-3への変更に伴って、田中碧が最終予選で初めて先発した。中盤はアンカーに遠藤航、右インサイドハーフに田中、左インサイドハーフに守田となった。

 遠藤と守田は、3月から6月の活動でダブルボランチを組んだ。遠藤と田中は、東京五輪でともにプレーしている。守田と田中は、川崎フロンターレのチームメイトだった。田中の後方に控える右SBの酒井宏樹、右CBの吉田麻也、左CBの冨安健洋も、東京五輪に出場している。4―3―3のシステムそのものはぶっつけ本番でも、培われてきた相互理解が土台となっていたのだ。

 システムを変更した理由について、森保監督は試合後の会見で「守田も田中もこれまでの代表活動、そして今回の代表活動のなかで非常に存在感のある取り組みをしてくれていた。守田に関しては直近のサウジアラビア戦に途中出場して、非常にいいパフォーマンスを見せてくれていたので、まずはふたりの調子を見て、先発で起用しようと考えた」と説明している。そのうえで、4-3-3についてはこう説明した。

「そのふたりを使うことで、どういう形が一番力が出るのか。なおかつ、オーストラリアとのマッチアップを考えたときに、我々のストロングポイントが出せるように、相手の良さを消せるようにした」

 4-3-3をあらかじめ準備していたのか。のちに森保監督に確認すると、サウジアラビア戦後の会見と同じ答えが返ってきた。「選手のコンディションを見極め、彼らならやってくれる」との信頼のもとで下した勝負手だったことを強調した。

 選手との信頼関係は、森保監督の強みである。キャプテンの吉田は「ここまで選手ファーストで考えてくれる監督はいないと思う」と話したことがあるが、サウジアラビアに敗れた時点で指揮官への批判がさらに高まり、それがチームをさらに結束させたはずだ。4-3-3のオートマティズムに物足りなさはあったものの、チームの一体感と個々の責任感が勝利を引き寄せる要因となった。他でもない選手たちこそが、勝ち切れない現状に歯がゆさや物足りなさを強く感じていたのだ。

 システムだけではなく選手交代にも変化があった。最終予選4試合目で初めて、大迫を途中交代させた。勝敗の決した終盤ではなく、1対0でリードする時間帯に背番号15を下げた。最終的には4枚のカードを切り、後半41分の決勝弾へと結びつけた。

【その(2)へ】
(4)へ続く
PHOTO GALLERY 全ての写真を見る
  1. 1
  2. 2