■定まりつつある方向性
大分トリニータが試合によってシステムも変え、試合中にも変幻自在に戦い方を変えることができるが、それは1人の監督の下で長年にわたって積み上げてきたベースがあるからであり、いわゆる“帰るべきところ”を持っているからでもある。
現在の日本最強のチーム、川崎フロンターレも、シーズン前に守田英正がチームを離れ、また、夏の移籍期間には攻撃の主役だった三笘薫とMFとして急成長した田中碧が海外に活躍の場を移すなど、シーズンの後半はかなり苦戦を強いられた。だが、彼らには「フロンターレのサッカー」というベースがあったからこそ、それを乗り切ることができた。そうした型があるからこそ、新加入の選手でもすぐにチームに馴染むことができるのだ。たとえば、今シーズン後半の苦しい時期に旗手怜央と橘田健人が急成長しフロンターレムを救った。
そうした“帰るべきところ”が、まだ浦和レッズには備わっていない。
もちろん、そうしたものが確立されるには時間がかかる。
だが、今の浦和にはリカルド・ロドリゲス監督の下で1シーズンを戦い抜いた蓄積がある。そして、天皇杯というタイトルを獲得したことで方向性も定まってくるであろう。そんな中で、新シーズンに向かっての準備のための春のキャンプの中で、独自のスタイルやコンセプトを確立することが大切だ。それこそが、浦和レッズがリーグ戦でも優勝を狙うための必須条件となるはずである。