【天皇杯 準決勝 浦和レッズvsセレッソ大阪 2021年12月12日 16:04キックオフ】
メインスタンドへの挨拶が始まっても、宇賀神友弥は1人だけゴール裏を眺めていた。
契約満了となった宇賀神にとって、これは浦和の選手として最後となる埼玉スタジアムでの試合。幸運なことに、観客数の制限が解除された。久しぶりに本当の満員になったゴール裏は、大旗が振られ、全体が赤・黒・白の3色の小旗で彩られ、応援歌こそないが熱気にあふれていた。久しぶりに感じる埼スタらしい雰囲気を目に焼き付けた彼は、少し遅れて挨拶の列に加わった。
天皇杯の持つ魅力を再確認するシーンだった。
天皇杯の魅力は色々ある。たとえば、プロ・アマ混合であること、一発勝負であること、それによってジャイアントキリングが起こること、などがよく挙がる。
長期にわたって開催される中で、Jリーグの終了後に訪れるクライマックスで急速に増してくる魅力もある。
それはエモーションだ。
引退を表明している選手や、退団や移籍が決まっている選手は、リーグ戦の最後に一つの区切りを迎えても、天皇杯を勝ち上がっていればまだそのチームで戦い続けることができる。