■バルセロナ、シント=トロイデンVVが行なっている試み
――トークンの面白い活用をしていると感じるクラブはありますでしょうか。
田中「バルセロナではトークンホルダーがユニフォームを着て、トップチームの前座の試合に出場するという特典をやっていましたね。あとはシント=トロイデンVVが、YouTubeの公式チャンネルで選手が参加する企画の罰ゲームを投票で決める、といった試みをしていました。
このように、アイディアはいろいろと出てきます。私たちが関わっているクラブも、負けずにいろいろなことをやっています。そして、アイディアはもっともっと出てくるはずです」
――なるほど。田中さんの会社フィナンシェとしては、トークンをクラブに「販売」しているのか、「提供」しているのか、どちらになるのでしょうか。
田中「僕らは固定費をもらうのではなく、レベニューシェアでやっていますから、関係としてはパートナー的な感じですね」
四方「結構、面白い関係ですよね。言い方が良いかどうか分かりませんが、レイヤー(階層)1にフィナンシェがいるとすると、我々はそこに乗っかっているんですよね。我々のトークンを購入しているファンとクラブは運命共同体だと言いましたが、フィナンシェと我々も運命共同体なんです。フィナンシェが頑張ってくれると、我々にも恩恵がある。我々が頑張ると、フィナンシェにも良いことがある。だから、どちらがクライアントで、どちらかが客、という関係ではないんですよね。
僕らから、“ユーザーからこういう声があるから、こうしたサービスにしてくださいよ”とか提言をして、良いサービスをつくっていくことができる。ですので、僕らの関係も、先程言った“コミュニティー”になっているんですよね。
レイヤー2にいる我々は他クラブとも結構仲が良いので、フィナンシェを一緒に流行らせようとすることもできる。実際に僕も、SHIBUYA CITY FCに声をかけられてトークンを始めましたし、他のクラブからの問い合わせにも答えています。フィナンシェを通じて知り合ったクラブオーナーのコミュニティーに行くこともあります。一定のライバル関係や、どちらが売れているかなという見方もしますが、“一緒に盛り上がっていきましょう”という感情の方が強いですね」
――クラブとトークンが絡むことで、どういう未来を描いていきたいですか。
田中「鎌倉インテルは、まさに上っていく途上にあるクラブです。カテゴリーを上っていく中で、我々のトークンのファンコミュニティーも広がり、なおかつトークンの価値が上がっていくという成功事例をつくりたい。“最初から応援することによるインセンティブがあるんだな”と知ってもらうことで、新しいクラブが出てきたときに、成功事例を持った人たちがどんどん入っていく。そうやって還元していくプラットフォームにしていきたいと思っているんですよね」
四方「僕はあたかも、よく知っているかのように話していますが、田中さんと会ったのは、つい4か月ほど前なんです。それまでは、仮想通貨の知識はほぼゼロでしたから、田中さんやテクノロジーの知識や概念が、新しい世界を開いて誘ってくれた、と思っているんですよね。
いろいろな新しいものが出てくる世の中で、いろいろとキャッチアップしながら、新しいチャレンジをしていきたいと思っています。その代表例が、このクラブトークンであり、ブロックチェーンかなと思っていて。そういうものを世に示していくことで、僕らのファンにも、“今回、鎌倉インテルを通じてクラブトークンを知った”という人も絶対にいるはずなんですよね。そういうのも、クラブの価値かなと思っていて。
僕自身、サッカーに興味がなかったら、ブロックチェーンをやっていないわけですよ。勉強すればするほど、“どうして今までやらなかったんだ”と思うようになりましたが、そこまで引き上げてくれたのはサッカーの力だと思っているんです。
もうひとつは、僕らの元々のビジョンである“インターナショナル”です。ブロックチェーンという仕組みを使うと、やすやすとボーダーを超えやすいんですよね。僕らの考えとデジタルは、相性が良い。デジタルアイテムで商圏を広げていくという、今までできなかったことができるようになってきているわけです。
たとえば、サッカーや物流の世界では、そういうことはできないという概念で、日々の仕事をしてきていた。しかし、そうした固定観念をぶっ壊してくれるものが出てきたわけで、我々としてはすごいチャンスなんじゃないかと思っています。フィナンシェもこれから海外に出ていこうとしているといいますので、そこでも歩調を共にできるんじゃないかなと思っています」